『レクイエム・レモン/ひかり』/川村 透
 

--すぐ済むから。


骨みたいにしゃらんしゃらん波に揺られてささやく貝殻たち
堤防の足元から照りかえす太陽のフレア
死はぴちゃぴちゃと波に姿を変えて爪先よりももっと下から舌なめずりをしている
太陽の蒼い炎だ
君は喪服で
あに、と僕と一緒に座っていた。
あの堤防のさきっちょで
黒いレモンのペンダントをして笑う
僕は君の
マスカットの汗を見つめていたエメラルドからチャコールの膿/海に視線は流れる
汗も涙も、「ボストン茶海事件」っぽく混ざり合って歴史、みたいなウソになって
しまうのはイヤなんだ

君は喪服で
ノーブルで残酷で太陽みたいに誇り高くちょっと舌ったらずで
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