耳鳴りの海に身を漂わせて/はじめ
 
き荒んだ
 蛸は天候の神様だったのだ よっぽどご立腹なことがあったのだろう 耳鳴りのせいだろうか? でも蛸には耳は無いはずだ
 狂瀾怒涛が僕を大きく飲み込む なぜか激しい耳鳴りが続き 海の中で呼吸ができない 僕は窒息しそうになる 暴れて藻掻いても捕まるものは何も無い 激甚な雨が凸凹な海を打つ
 雷鳴が轟き 頸風が吹き荒れる 僕はもう精根尽き果てて 海底に沈んでいく 外の天候は酷い 相変わらず耳には耳鳴りの音しか聞こえない もう駄目かと思いかけた寸前 何者かの群れが僕を背中に乗せて猛スピードで荒れ狂う海を越えていった 僕は背中の鰭を無意識の内に掴んでいた
 気が付くと僕は小島の砂浜に倒れてい
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