ゲル状/仲本いすら
 

ひげが少し
痛い。


* * * *


十八歳の夏に
大抵の蝉は恋に落ちる

落ちた後は
ダンプカーに轢かれる


またそれを繰り返すが
やめる気は
さらさら無い


* * * 


あなたはまた
あたしを抱いた

五年遡った手紙と
一緒に
あたしを抱いた

文字が淫乱に
泳ぎ始めて
あたしはまた
鳩のように鳴いた

落ちたわけじゃない


動物的にそれをくちに運ぶ。


* *


後ろから突かれるたびに
背中には灼熱が産まれて
それが少しずつ私を溶かし
残った私は
貴方のことばかり想っていた
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