眩めく昨日/結城 森士
ら手招きをしていた幾つもの透明な手が僕の隣を歩いていた女を掴まえて彼女は無数の蒼い手に引かれて薄らと消えていく
(微笑みだけを残しながら)
僕はあの日、神社には行かなかったと思い込もうとする
今は冬なのに蝉の声だけが耳に残っている
耳の奥には未だに女の声が残っていて後頭部の辺りで僕を呼
ぶ声が聞こえる。後ろを振り返っても何も無いし何処にも光
は見えない…何も無かった、何も…無かったはずの記憶の声
が(…私より先に謝るべき人がいるんじゃない?) 聞こえる
、目の前はもう空虚な闇に包まれた筈なのに(未だに微笑み
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