ほしのまち/水町綜助
 
ない

店を出て

とぼとぼと歩いて

首筋だけ暑くて

とぼとぼと歩いて

坂の上の駅舎を過ぎて

民家も途切れるころ

狭い駐車場の一番奥に座って

そこは坂の途切れるところ

丘の途切れるところ

山の途切れるところ

一本の鉄の鎖が崖の下の銀色のちいさな町を区切っている

風で冷えた瞼の下に広がるのは山に抱かれた町明かりで

黒い宇宙に散った銀色の生活たちのひかりで

天と地は控えめな星空で

山はもう塗りこめられているから無いと同じ

天竜川が流れてそこには時の分かれる町があって

古い鉄橋の上から僕たちは精霊流しを見た
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