ほしのまち/水町綜助
 
山の中の坂道に出来た町のなかで一人だった



五年も前

五年も経ってない夜



マスターがアブラムシと言い張る茶羽ゴキブリだらけの木造りの飲み屋

別名だとはわかるけど、頷いてください

本当はあなたじゃなくほかのあなたにそれもこんなことじゃなく

頷いてください

と言いたかった

グラスを拭いていないで

強くこすれる音に掻き消さないで

似合わないものを飲んでいる

何もすることがなかったから

きみいがいだれもしらないこのまちだ

一度だけ飲んだことのあるウイスキーがとくとくとつがれる音で

僕は別に眠たくもなれない
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