がらくた屋敷の中で/夕凪ここあ
初めての廃屋は思ってたよりずっと大きくてこわかった
泣きそうになっていると
ゆういち君が、ぐいって私の手を引っ張った
廃屋の中に一匹の猫がいた
廃屋係の仕事は主に猫の世話だったから、
その日のうちにいくつか約束ごとをした
親には秘密にすること
係の日はスカートをはかないこと
猫の観察日記をつけること
私はこっそりゆういち君が好きだったから嬉しかった
いつの間にか係のことも嫌じゃなくなっていた
不思議。
それから廃屋係にもだいぶ慣れたころ事件が起こった
私がうっかり口を滑らせてしまったのだ、
だって
子猫が産まれたんだ。
お母さん、
廃
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