春の憂鬱/水町綜助
ドリ
オナガガモ
が居るんだそうだ
知らないが
いったいどれが何匹まだここにいる?
ぼくは歩く
いくつか橋をやり過ごして
橋をやり過ごすごとにドウダンツツジの植え込みは
なぜこんなにも空に向かって小さな芽を伸ばすんだ
茎と枝ばかりになりながら
その枝を三つ叉に別れさせながら
そこに羽虫を遊ばせながら
支離滅裂に
空を突こうとしている
川は静かに流れる
静かに流れている
薄赤い西日を浮かべてそれを
めちゃくちゃに溶かし散らせながら
流れている
ぼくの進む方から
だからその人は川
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