春の憂鬱/水町綜助
 
ドリ

オナガガモ

が居るんだそうだ

知らないが

いったいどれが何匹まだここにいる?

ぼくは歩く

いくつか橋をやり過ごして

橋をやり過ごすごとにドウダンツツジの植え込みは

なぜこんなにも空に向かって小さな芽を伸ばすんだ

茎と枝ばかりになりながら

その枝を三つ叉に別れさせながら

そこに羽虫を遊ばせながら

支離滅裂に

空を突こうとしている

川は静かに流れる

静かに流れている

薄赤い西日を浮かべてそれを

めちゃくちゃに溶かし散らせながら

流れている


ぼくの進む方から

だからその人は川
[次のページ]
戻る   Point(8)