おらあ悪党だすけ、/渦巻二三五
えた体は浅黒く仁王様のようにたくましかった
村の人たちの信頼篤く、世話役のようなこともしていたらしい
「わたしも満州に置き去りになったかもしない」
と、たった一度だけ母が言ったことがあった
祖父の口利きで何人もの人が満州へ渡ったらしい
土地がもらえて豊かに暮らせるから、と
祖父自身も心傾きかけていたところ、強く引き止めた人がいて
祖父は村に留まった
祖父はたくさんの人を満州に渡らせて、賞状をもらった
という話を聞いたのは、そのときたった一度きり
だからわたしの記憶ちがいかもしれない
「長岡の空襲の時は、みんな土手っ端へ逃げてねぇ。
でも、きれいだった。夜なのに、むこ
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