落し物/水町綜助
にをですか?」と尋ねた。
彼は言う。
「いや、ただの紙切れかもしれないし、ぞうきんかもしれないですけれども、なにか白くて、それでふちがきりきりとひかるものでしたよ」
言われて僕はポケットに手をつっこんで探った。ハンカチもあるし洗いたてのタオルもある。レシートの束だってこんなにある。それは一枚だって欠けていない。
でも僕は慌てた。
ポケットにはほかにはなにも入れなかったけれども、ひょっとしたら入れっぱなしにしていたなにかを落としたのかもわからなかったからだ。
自分がなにを落としたのだかわからないからだ。
だから僕は尋ねる。「どこで落としましたか?」
彼は指さしながら教えてくれた。
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