落し物/水町綜助
「あの橋のあたりです。ちょうど駅の入り口らへんです」
僕もそちらを見る。彼の指した駅と橋は、ネオンもぼやけて見えるくらい遠かった。
なんなのだろう?
考えても全くご名答は出てこなかった。僕はほんとうに困りはててしまった。
つまらないものかもしれないし、大事なものだったかも知れない。ひょっとしたらなにも落とさなかったかもしれない。
僕が俯いて心当たりを探っていると、彼は「じゃあ気をつけて」と言って去ってしまった。
僕は二分くらいその場所で考えてから、とりあえず自分が必要とするものは持っていたので、また家に向かって歩くことにした。
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