Starbow/佐々宝砂
先に何の望みも未来も見てはいない。
そこに恒星が存在するかどうかさえ、俺は知らない。
俺はおまえに待っていてもらいたかっただけなのだ。
俺はおまえに遠くまで連れていってもらいたかっただけなのだ。
遠い昔、ああそうだもう100年も前に、
俺を待ってくれなかった女、俺を置き去りにした女、
あの女ももう銀河の塵になっただろうが、
おまえはまだそこにいる。
あの女からトレースした思考パターンを持つおまえは、
俺がプログラムしたように、
俺を愛し、俺を待ち続け、俺に裏切られて、発狂する。
それがあの女への、俺の復讐なのだ。
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