最期の写真家/蒸発王
た
引きこもって
冬
ある日
師匠がやってきて
あの子が死んだから
今から家に写真を届けに行くぞ と言った
放心した僕を
師匠はものすごい力で引っ張って
葬式の準備をしている
あの子の家へ連れていった
両親の前に引きずり出された僕は
まるで死刑囚のような心境で
師匠が写真を引き渡し
事情を説明する間に
合いの手を入れるように謝罪を繰り返していた
写真の中の彼女に似たお母さんは
目をしょぼつかせて
写真を覗き込み
泣いてから
やがて
頭を下げて
ありがとうございます
と言った
娘は生ま
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