最期の写真家/蒸発王
生まれた時から心臓が悪くて
10歳までは生きられないと言われていたのです
それが
こうして写真の中だけでも
こんなに綺麗に育った姿を写して頂いて
本当に
本当に
ありがとうございます
涙が
出た
僕は
泣きながら呂律の回らぬ舌で
ごめんなさい と
ありがとうございます を
叫んだ
そうして僕は
最期の写真を撮るようになった
最期の写真を撮っていると
辛い事は本当に多く
それでも
それでも止めないのは
あの一言のおかげだと思っている
(ありがとうございます)
『最期の写真家』
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