小説の習作 原稿用紙三頁 #10/田中教平
ユウスケは深夜、三時頃、目を覚ました。
彼は二階キッチンの換気扇の下、煙草を喫った。手のひらを眺めると、ピクついた。彼の心中のバランスは崩れていた。崩れて、いつまでも戻らない。不穏な感じがずっと続いて、まるで裁判の出廷前だった。彼の不快な感じを表す適当な語を、彼は知らなかった。すると、自然、それは事件の記された小説の中に見いだしてもいいと、彼は考えた。本棚を探った。本棚の在る書斎は寒かった。彼が選んだのは夏目漱石の「門」であった。
空が明るくなって、妻のカナにユウスケは本日、事業所に行くのか問われた。カナ、彼女から見てユウスケは鬱状態に思われた。それから何度同じ事を訊いても、ユウスケはわか
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