待ってるガール/本田憲嵩
 
少女はずっと灰色のくもり空を見上げていた。そのちょっとした公園に設置された、幼児用すべり台の踊り場に腰かけながら、その手にはてるてる坊主の白い胴体を握り締めて。その羽織った白いカーディガンとすこしながめの頭髪をつよい風にうねらせながら、「待ちたいんです」って。「いったい誰を?」、「うーん誰かな?」って、そのとてもきれいな顔だちとおおきな瞳で言う。彼女はいつか灰色の空のくもまから太陽が顔を覗かせるのを待っているのだという。けれども、きょうこれからの天気予報は雨、風はますます強くなるばかり。それどころか小雨もなんだかぱらぱらと降ってきた。――かと思うと、突然、灰色の空の厚いくもがまるでパン生地かなにか
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