未分化横丁、ついてこないで、刑事アメンボ/菊西 夕座
 
生まれたのはアメンボ横丁、ではなくて未分化横丁の横っちょの方
あまり覚えていないのは、そのほうがいいと道が途中で折れていたから
その折れた「く」の字の突き当りからちょろちょろとわきでている地下水の求愛
壁にはりつくようにして道を登ってきた影が、口の横っちょにふくんで一息いれる
地下はそれをとがめるように胴体を複雑にうねらせるから、道が波打ってしまう
せっかく一息いれていた白蟻のような影は、波頭にはりついたまま落下していく
影の位置は盛り上がったかと思うと降下し、また次第に盛り上がっては降下する
その波形が地平のはてまで延びていくのを見ながら、突き当たりに立っている外灯
ようやく腹の
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