2004 12/25 20:02
佐々宝砂
師匠のような恋人のようなでもやっぱりただ師弟関係だよなというような、けっこう年いった男性(ピーター・バラカンに似ている)と、ばかに狭いホテルの一室のような部屋にいる。ふたりきりでいるのではなく、私と師匠の他に十人以上いる。私以外はみんな男で、年齢はバラバラ、しかし私を含めみんな弟子だ。師匠は死にかけていて、ベッドサイドの椅子に座っている。私は涙をぽろぽろ流しながら、何か食べ物のようなもので汚れた師匠の手を、ハンカチでぬぐう。ベッドは空で……師匠と弟子は、最後の晩餐の絵のように、ベッドを囲んで座っている。夜の十時だ。十時半になれば、師匠は死ぬ。みんなそれを知っている。
今年の1月はしあわせで楽しかったなと、私は自分の日記を繰る。妊婦の腹を蹴る牛鬼の絵が貼ってある。師匠がくれた絵だ。血みどろで、英名二十八衆句の絵みたいだ。私は「十時半になったら師匠は死ぬのだ」と書いて、一年前の私に日記を送付した。
師匠が死んだので、母と叔母と私で湯灌をした。叔母がご飯をたくさん炊いて持ってきた。棺桶にご飯を少しいれた。叔母がもっとたくさん入れろというので、言われるままに入れていたら、師匠の顔は白いご飯に隠れてしまった。