夢を見たら書き込むスレ[339]
2004 12/20 03:34
佐々宝砂

私は、大きめの敷地に増築改築を重ねたつぎはぎだらけの古い家屋がある、昔ながらの農家のような家にいた。大人たちが庭仕事をしていた。子供たちが土間で遊んでいた。私は子供たちの一人で、やっぱり土間で遊んでいた。リーダー格の子供が家の中に駆け込んだので、私たちも靴(やらゲタやらサンダルやら)を脱いで家に入った。家のなかは迷路だ。大人たちが針仕事している部屋があるかと思うと、病人が寝ている部屋もある。それらがとりとめなく有機的につながっている。木製の古い階段が、きしみながらどこまでも続いていたりする。雰囲気は、増改築を重ねた古い温泉旅館に似ている。別館と新館と旧館があって、それらが渡り廊下でつながっていて、でも旧館は危険なため立入禁止、なんてのに雰囲気が似ている。

自分のいるのが一階だか六階だか地下だかわからなくなったころ、子供の一人が裏口に自分の靴を見つけて、外にとびでてゆく。あ、ここ一階なんだ、と思って私も靴を履いてでてゆこうとするが、私の靴はない。この裏口で靴を脱いだわけではないから靴がないのは理屈にあってるのだけど、なぜか私はここで唐突に気づいた。そうだこれは夢だ。夢なんだから靴があると思えばあるはず。そこで私は、「靴よあれ」と強く思った(笑)。するとそこに靴があった、私がいつも履いてる、かなりくたびれて靴音が悪くなった、茶色いローファーが。つまりこれはやっぱり確実に、夢だ。確信した私はローファー履いて外に飛び出た。

夢だと気づいたので、映像がくっきりしすぎて、むしろ気持がわるい。しかし舞台に変化はなかった。大きめの敷地に増築改築を重ねたつぎはぎだらけの古い家屋。広い、しかしただ広いというだけで手入れがなされているわけでもない庭。脇屋(別棟のこと)の一階は作業場所になっていて、広げたむしろの上に豆だかなんだかわからないものが干してある。垣根はかなり背の高い槙だ。私はとにかく飛ぶことにした。夢の中で夢と気づいたときの習慣みたいなもんだ(笑。夢なんだから、夢でしかできないことをしなくちゃ、そう。私は大きく手を広げて空を見た、とんっ、と軽く地面を蹴ると、それだけで私は飛んだ。

いつのまにか、夕方少しすぎの、あたりがみんなほの青く見える時刻になっていた。一日のうちで、私が一番好きな時間。空気はすこし湿っぽかった、雨のにおいがした。空は曇っていて、風はなかった。私がスピードを出して鋭く空を切り裂くときだけ、頬に風があたった。でも私はあまり高く飛べなかった。せいぜい10メートルかそこら、どうもいまいち、すっきりしない。私はどこかに行こうと思った。誰か、私が大好きな人の住む街へ。でも私はそれがどこか知らなかった。それが誰だかもわからなかった、忘れていた。私は無性に悲しくなった。

私は、大きなホテルのような建物のそばに降りた。見たことない女が一人いた。女がついてきてくれと私に頼むので、私はあとについてった。投げやりな気分になっていたので、どうせこんなホテルみたいなとこにくるのだから、とびきりのご馳走ととびきりの恋人を、とかなり俗っぽいことを願った。エレベーターでパーティー会場に着くと、そこのテーブルには、確かにご馳走があった。

ソフトクラブのXO醤煮、伊勢エビの刺身など……甲殻類の料理が多かったのはいったいなぜだったんだろう。私にとってご馳走って、海老や蟹なのだろうか。私は蟹だの海老だのをむさぼりくった。それなりにうまかった。酒はなかった。でも私は退屈だった。とびきりのご馳走はあったけど、とびきりの恋人はなし、わたしはまた無性に悲しくなった。

パーティーの招待客たちが噂話をしていた。祖母が家を出た、と誰かが言った。その祖母というのが私の祖母なのか誰かの祖母なのか、私にはわからない。私はだんだんいろいろわからなくなった。ぼんやりした。夢だということも忘れた。祖母がライオンと一緒に森を走っていて、新聞の小説が唐突に夢落ちで終わって、……というとりとめもない映像が走り走り、私は目を覚ました。
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