2006 05/10 12:51
ワタナbシンゴ
『愛と暴力の現代思想』
2006
矢部史郎・山の手緑著
青土社
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4791762630/250-1992901-6639444?v=glance&n=465392
久々に興奮した。このグロテスクなまでの消費社会。消費することで自由を得ていると思わされている、思い込んでいる現代人の矮小化され、悲喜劇的な現実を、あるときは爆笑を誘う記述で暴露し、あるときはそこからの回避を力強く後押しし、たくみに、そしてしなやかに闘う作法を提示している。
なによりも矢部四郎(ヤブシロウ)の視点がいい。新自由主義批判の多くは、大きなものに焦点を置きすぎ、現実の実践的な高度消費・高度管理社会への抵抗の作法を示さない。しかし、矢部が戦う相手はディズニーランドだったり、東京都の権力側からの銭湯廃止の動きだったり、落書きを禁止する行政や持てるものたち側の住民だったり、いつの間にか刷り込まれてきた禁煙運動だったり、要するに「お前ら、近代以降の人間に問われているのは、自分自身の頭と体でそのルール自体を考え、作り出す、その思考的営みのことじゃねえのかよ。監視、消費で、いつの間にか権力側の都合のいいように摩り替えられ、手先のように従って生きる、その思考の死が、ルールに不服従なものよりも醜いってことを自覚しやがれ!」と、現代人の人間性回復を叫んでいるのである。
目を覚ませ、持たざるものたちよ。彼は市井で闘っている。俺も闘う。おもろいぞ。読め。