2008 05/26 11:30
田代深子
このフォーラム上で作者名を表示しないほうがいいというような意見があるようだ。出版関係の仕事をしているせいもあって、著作権に対するそうした無欲さ/無頓着さには意外な気持ちがあるが、インターネット世界はまさにその無名性に支えられているんだなぁとも思う。
わたしなんかは、特に作品の著者名には重きを置く。好きな書き手を選んで読むし、自分の作品には20年変わらぬ筆名をべたっとつける。わたしの作品を待っていてくれる奇特な読者も稀にいる(最近ここに書けてなくて本当にすみません)し、わたしの作品に批判を与えたい読者に、宛先を示しておきたい。
と書いて、つねづね自分が「作品と作者は分けて考えよ」と言ってきたのと、なんか違うんじゃねーの?とも。いやいや、作品の読まれ方と作者の意図は必ずしも合致しないし、「作品の意味」が読者にゆだねられることは、そうだ。ただ、作者は作品の存在そのものに、責任を持たなきゃいかんだろ、という昔気質。それが作者名明記というものなんじゃないのか。近代的な個人主義の名残、自己顕示欲の強い行為。ある部分で表現の無限な自由を束縛する行為だが、ひとかたまりの「作品」というものが、近代的個体である限りは、「作者」も不在ではありえないだろう。
もし作者不在を前提とするならば、個としての作品もまた存在せず、それらはあらゆる改変と無制限の複製を許されるはずだ。作者未詳の歌や物語として流布する。まぁ、そうした現象としての表現もまた意義深い。
だが、このフォーラムでは「作品」をそのようなものとして扱ってはいないはずだ。というわけで、作者名非表示は、違うんじゃないのかな。