2005 06/09 05:41
佐々宝砂
「或る煙草の話」というタイトルでちいさい文章を書こうと思ったのでした。このタイトルはイナガキタルホ「或る小路の話」のパクリですが、引用したいと思った文章は、「或る小路の話」ではなく「天体嗜好症」にありました。
>ガス灯の下にひょっくり影法師が現われて、ぱたぱたと駆けてくるなり、私の手に小さな紙箱を握らせました。「これしかないんだ」
>むろんシガレットですが、ひと口喫ってみるとまるで薄荷です。いや、お腹にはたまらないで、口の中いっぱいに涼しいかおりが拡がるクリームです。ガス灯の下へ行って紙箱をしらべると、銀紙のおもてに"Starry Night"とありますが、裏面にぎっしり詰っている細字は、虫眼鏡でもなければ読めそうにありません。
わたしはこれを読んで喫煙者になったような気がします。でもこんな煙草よのなかにあるわけない。いまのところいちばんこのイメージに近いのはアイシーンだと思います。アイシーンを喫ったときわたしは、わ、もしかしたらこれ、"Starry Night"だ、と思ったのでした。