「 蹴球短歌。 」
PULL.
自由人。
校庭のベッケンバウアーは、
痛めてもない肩を吊り。
蹴球少年はリベロの意味知らずして、
ベッケンバウアーを知る。
少年の目に映るその稲妻は、
鮮烈にしてクライフ・ターン。
たった一度見ただけのそれ、
校庭の隅にて何度も繰り返し。
使うなと言われても試合で使う。
そんな意地あった少年の日。
「憧れの人は、
ペレ?リベリーノ?。」
「ううん。
空飛ぶオランダ人。」
「それ誰?。」
それはヨハン・クライフ。
もうひとりのジーザスは空飛ぶオランダ人。
セレソン。
選ばれしカナリアたち。
囀ることを宿命づけられて。
カルテット。
美しきが勝つとは限らない。
それが蹴球の真実。
リプレイされる真実には神の姿なくてマラドーナの手。
左足の魔術には誰も触れられずして五人抜きマラドーナ。
カメラの前で吼えるあなた興奮しすぎドーピング・マラドーナ。
見よ!VIP席でユニフォームを振り回すあのおっさんがマラドーナ!!。
過ぎゆく時の流れは残酷に思い出刈り取り嗚呼マラドーナ。
口惜しさ積み重ね。
それが彼らを育てると信じて、
ドルトムント。
インザーギのゴール!。
リッピ監督にのど輪かますガットゥーゾ。
なんで?。
黄昏時のウイングは円熟にしてフィーゴ独に散りゆく。
ちょっと待てマテラッティー。
そんなダジャレも通じぬ地団駄踏んでジダン。
引き際はルーレット。
とはいかず、
三度目の頭突きの続きは見れず。
イタリア優勝!!。
ブリーフいっちょで芝喰うガットゥーゾ。
やっぱなんで?。
あんなに大きく見えた少年の日。
ゴールポストに手が届く今。
錆び付いた足にボールは重く、
もつれる痛みにフェイント仕掛け。
「ペナルティーエリアの前。
絶好の位置だ!。
どうする、
撃て撃てっ!。
シュート!。」
思い出はあの少年を越え、
ゴールの上。
遙か向こうの彼方へ、
了。
短歌
「 蹴球短歌。 」
Copyright
PULL.
2006-09-18 07:33:42
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