美味しいもの
ガマパックン
しんとした耳に
スズメのさえずり
どこか遠い国の言葉で書かれたラベルの
パイナップルの缶詰を
慎重に開け
ガラスのお椀にヨーグルトと混ぜて
冷蔵庫にしまう
部屋を訪ねると
ベッドに横になり
瞳だけで僕の知らないものを見つめている
卵をフライパンに落とし
味の素と塩で軽く味付けして
水を少しいれ蓋をする
トースターがじりり、と
音をたてるのを聴きながら
サニーレタスを千切る
湯気ののぼる半熟の目玉焼きと
トーストに苺ジャムをぬり
皿にのせてレタスを添え
冷えたヨーグルトと温めたミルク
それらを盆にのせてもっていく
この卵と牛乳は北海道から取り寄せたんです
いかがですか?
うなづく
このパンね、実は今焼いたばっかりなんです
ヨーグルトよく冷えてますよ、お好きですか?
うそぶきながら
喉の動きにあわせてゆっくり口に運ぶ
いかがでしたか?
書類の朝食欄に食べた食事量を記載しながら声をかける
おいしかった
僕があなたの見ているものをしらないように
まれに聞けるあなたのしわがれた声が
僕の糧になることを
あなたは知らない
自由詩 美味しいもの Copyright
ガマパックン 2011-06-17 16:40:58