[479]渡邉建志[2014 08/01 23:52]
はなにがあっても起こしてはならない、という彼の強いメッセージが、彼が彼の、ともすればあまり豊かではないとする人さえいる、持ちうる限りのメロディ力を振り絞り、そのうえ余り有るかれのコード力を十全に発揮してこれが作られたという、その「唯一さ」を、なぜこのドラマだけのために割いたのかという地点にこそ、答えがあるようにも思う。解決のしようのない、戦争のなかにおかれた在米日本人を、テーマにし、それに寄り添うしかできないが寄り添うことができる音楽を書いた、ということ/映画音楽は引き算、とは武満の名言だが、たしかこの音楽は映像に勝ち過ぎているかもしれない。ジム・ジャームッシュが後の「系図」のテーマを映画音楽として却下した理由は、まさにそこ(「音楽が映像に勝ってしまう」)だったわけだけれど、すくなくともこのドラマにおいてはその勝ちっぷりは失敗ではない。もとより映像と音楽の格が違うと思われ、音楽が主題を掬い上げている。そこに互角に佇んでいた笠智衆。
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