創書日和。縁 【世界の縁に立つ三つの肖像】/佐々宝砂
 
られた世界の縁のかけらをつまみ
熱い珈琲にぽとんと落とす


3.

ここから先は滝なのだ
時間も空間もすべて雪崩落ちてゆく滝
滝の向こうにはなにかがそびえるが
あれは
あれについて
あれは語り得ない
わたしはあれについて語る言葉を持たない
リーチピープに連絡しておいたが
あいつはちゃんと待っててくれるか
わたしはあっちまで行けるのか
滝のそばにはどこまでも続く真っ白な壁があって
真っ白な子羊が一匹
私を屠れ
私を食え
と強要する
そんな料理は世界の果てのレストランでさえ
出しゃしないと思う
徳川家康だって食わないと思う
ましてわたしは
ここが世界の縁だとして
子羊はあのかたの化身であるとして
でも
わたしは一歩も進むことができない
彫像のように
ただかたまっている


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