創書日和「月」 往還/大村 浩一
ていく昔の私
いいえ実際には
私がその焼き付けられた写真の前から無限に遠ざかって
消えていく
* * *
「また来られるよ」と言われ
「また来ようね」と静かに笑った
「またこんど」が無いことに
本当は気づいている
自分がこれから
別の生き物に変っていくことにも
* * *
前に出来た事が出来なくなるのは
どんな気持ちだろう
ネクタイが結べなくなりそうな気がして
冷や汗が出た
* * *
20年越しの都市計画に基づき
街が根こそぎ掘り返されていく
20年後には綺麗に整った未来がやってくるが
その中には私は居ない
そこを生きることはその頃には
誰かに託すことになっている
2008/2/29
大村浩一
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