いつかまた、会えるから、(マリーノ超特急)/角田寿星
のざまさ
俺とあんちゃんはそれぞれの義肢をみせる
「冗談じゃねえ」
冗談じゃねえ 今じゃあんちゃんの口癖だ
「ここからまさかの大逆転てのがキャプテンエック様だ そうだろう?」
現実的には無理だがあんたが言うならそのとおりだろう
「お前らもまだあきらめちゃいねえな 眼を見りゃわかるよ」
諦めてたら今時こんな生き恥晒しちゃいねえよ
「にしても…ほんとに何にもなくなっちまったんだな」
なあに 昔っから何にもなかったじゃないか
この本を読んでたガキの頃だって
俺とあんちゃんとキャプテンしかいなかった
今日は思いもかけずキャプテンに会えた それで充分さ
「立派になったなあ ほんとに立派になった」
あんたはオレの親父かよ 笑い合いながら
目線で別れを告げ本を閉じて
爺さん どうもありがとう
あんちゃんは『大宇宙冒険野郎』を爺さんに返す
無言のままじっと見つめる爺さんに
明日も行くよ 本を採りに
俺たちは手ぶらで
暮れゆく浜辺のほうへ歩いていった
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