青い預言者(マリーノ超特急)/角田寿星
 
ルは秘法を伝道するべく北への旅をふたたび始めたのだと。また或る者は言う。アスルはそもそも人ではなく空から降り立った預言者であり救世主であり大木よりこぼれる果実は預言者アスルのみことばにほかならない 信じよ!と。また或る者は言う。彼は管理局の非合法な使者であり人類に同情的な存在により秘密裏のうちに地上に派遣された下級職員であると。何者かがつぶやいた。信ずるものを奪われた人々が編み出した新たな偶像。寄る辺なき者どもが必死にすがろうとする哀しき玩具。

アスルは何も語ることなく去っていった。

入江を囲む切り立った崖上の村はずれになかば大木と同化したようにアスルのかつての住処がある。わたしたちはそれを青い預言者の家と呼び ここを青い預言者の村と秘かに呼んでいる。崖を吹き上げるつよい潮風にアスルの木は今日もざわめいてそれはハーモニカの音色なのかアスルの預言なのか或いは自分の耳を持った者ならばきっと聴き取ることができるのだろう と。

  グループ"マリーノ超特急"
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