ノート(昼と羽)/木立 悟
鉱(いし)は水に落ち
布になり
底へ底へ
飛び去ってゆく
名前は流れ
誰もいない日
空を映して
さらに流れる
影をなぞる影がいて
壁のそばから道を見ている
羽をひとつ手のひらに描(か)き
熱のゆらぎのほうへ向ける
日陰の色を痛がりながら
大きな泡が屋根を歩く
布になれずに沈んだ鉱へ
少しだけ長く虹は降る
昼はふたつ
静かに見ている
原と原をつなぐ羽
いつしか道にあふれている
消えてはすべり 見えてはすべる
音は常にうすく重なる
たくさんの足跡をはばたかせ
草と鉱の道はつづく
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