ノート(消えたひとへ)/木立 悟
 




膝小僧の原にうたいながら
幾度も幾度もくちづけながら
鉄を見捨てぬ鉄の味の背
赤錆の行方を見つめていた


ふたりの終わり
既知につながり
ひとりには帰らず
果実のように果実に降る雪


砂を固めた建物の回廊
無数の曲がり角にたたずみながら
灰はむらさきの命を見ていた
孵ることのない命を見ていた


代わるものはなく
押し寄せていた
つながりを知らず
つながっていた


砂の夢のなかに
またたくもの
めぐりから外れ
歩むたましい
見えないすべてをまばたきに
あふれさせて



救われることなく救われたのに
あなたは
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