フラグメンツ #71〜80/大覚アキラ
 
イクのエンジン音
 マンションの前で止まった
 見下ろすと
 タンデムシートから降りた女の子が
 自分の巻いていたマフラーを
 男の子の首に巻いてあげて
 そのまま
 短いキスをした



#76

 病院の待合室は
 すごくだだっ広くて
 すごく天井が高くて
 まるで古代遺跡みたいだ

 巫女のような看護婦が
 わたしの名前を呼ぶ
 その声が
 高い天井にこだまして

 逃げ出したくなった



#77

 すべては終わりにむかって流れてゆく
 滝壺にむかって流れてゆく川のように
 止めることなどできるはずもない
 せめて川岸の景色
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