縁側/草野春心
 
ずつ数えているとき
  君を思い出すのはむなしいことかな?



  うん、
  そうかもしれない
  でも悪いことじゃない
  やがて僕の歯が
  すっかり抜けてしまったとき
  呆けた顔をして
  記憶の闇をまさぐりながら
  誰を探しているのかもわからなくなるとき
  銀杏の葉の舞う縁側に
  温かな血潮のように光がそそぎ
  二人が一緒に
  失くし合ってきた歓びに
  よく似た影が笑っているなら



  愛することは悪いことじゃない
  君を愛したことは
  うん、
  そんなに悪いことじゃない




   グループ"春心恋歌"
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