語彙/草野春心
 


  十月六日
  梢という言葉をまだ
  使ったことがないと気づく
  酢酸オルセインに染められた玉葱の薄皮
  カヴァガラスとスライドガラスに押さえ込まれた
  あの惨めさ
  たとえば数秒ののち、
  わたしはここにはいないだろう
  あるいはわたしの右脚だけが
  綺麗さっぱり消失する
  痛みさえなく
  白く爆ぜる





   グループ"短詩集"
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