批評祭参加作品■〈日常〉へたどりつくための彷徨 ??坂井信夫『〈日常〉へ』について/岡部淳太郎
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釘男はいつも話者の前に現われる。話者の家の玄関のまえに立ち、「鴉の屍をぶらさげ/それを五寸釘で扉にうちつけた」り「穴のあいた片手をあげ」たりという行為は謎めいていて不気味だ。こうした記述から「釘男」を死神か何かのように感じてしまいそうになる。たしかにそのような側面も持っているのかもしれないが、どうやらそれだけではないようだ。もう少しこの「釘男」について見てみよう。
公園のベンチに坐った男が
寄ってくる鳩たちめがけて餌を投げている
かれは職がないのか 週日が休みなのか
ただ無表情に餌をあたえつづけている
(中略)
鳩たちは餌をつい
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