【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
ルはこの虹をくぐった向こうの世界を想像し始めました。すると助手席側の
窓ガラスに映るハミルの人相。ハミルは首を振ります。
「ちがう、その果て!」力いっぱい込められた声でした。ハミルは向こうの世界を
飛びたいとして再び鳥になります。
そこはひとつの町のようでした。てらてらと……
ハミルはひとつひとつを辿っていきました、確かめました。だから、淋しくな
り、心細くなりました。ハミルの行き着ける場所がもうずっと、おんなしなのだと
知ってしまったのです。ハミルは窓を開けました。とてもやわらかな雨でした。
もはや血の虹が七つ噴き出ている車のなかで、自分の虹を見
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