【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
 
そして二回の電車。「」()の使用、その音質の差。


「おい、ハミル、おいったら」ムスカの声が聞こえたような気がしました。
「あん?」ハミルはぼんやりとボール塔を眺めています。隣の席を見遣ると、相変
わらずムスカはじいっとスピーカーに耳を傾けたままです。ハミルはボール塔のほ
うに向き直して、それから口を開きました。
「ねえ、あのボール塔が廻りつづけるのって中のひとを誰も出口に通さないためっ
て学校で習ったんだけどホントかな」
「え、なに?」
 パシヴィテ。

「あん?」の響きのリアルさ。聞こえます。それで、ボール塔の説明が初
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