【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
すが、ハミルにはなかなか
馴染めません。色んな音に畳み掛けられているうちに背中が痒くなったり、もぞも
ぞしてみたり、くすりと笑ってみたりもしました。
「今日、来てよかったろう」ハミルの様子を見てムスカは満足そうに謂います。
「うん」ハミルは返答に困りました。ハミルは盗聴という行為に特別、関心を持て
ないでいるのです。頼まれるままに簡単なことをこなしているだけです。そりゃ、
こんな音を聴かされたら誰でもむずむずするってもんさ、そう思うばかりなので
す。
「え、なに?」
目を反らしたハミルは、シャッターを大写しにした横窓を、指でなぞりました。
「テ・ナ・ン・ト・募・集・中」ああ、
[次のページ]
前 次 グループ"フレージストのための音楽"
編 削 Point(5)