眼球/士狼(銀)
切って泣きました。
何を入れても落ち着かないので、
カンガルーの母親は泣きながらお役所に行き、
わたしの子供を返してください、
返してください、
と何度も何度も頼みましたが、
お役所の屋根に住む鳥たちは取り合ってはくれませんでした、
環境対策だから(諦めなさい
死んでしまったのだ(諦めるな(殺されたのだ
それは間違っている?(それは正しい?(淘汰されるべきは誰だ?
太陽が落ちるときを、
静かに受け入れられるものに、
武器など要らぬ
嗚呼その眼球の美しさ!
鳥たちが口々に騒ぎ始めたので、
お役所の人たちに見つかった、
ボロボロの母親は殺されてしまいました、
その時生まれた子供は、
薄れていく体温を追いかけて、
冷たく硬くなる母親にしがみついて死にました。
遠くの方で柵の中の羊たちが、
くすくすくす、
と笑っているようでした、
ぷあぷあと泣いていたのは、
或いは珊瑚の海であったかもしれません、
真っ青な空と真っ白な雲の見事な昼のことでした。
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