連作「歌う川」より その3/岡部淳太郎
魚の鱗が混じっており
家長の熱で赤く変色した額から流れた
汗には
彼の体内に沈澱していた金粉が混じっていた
――僕たち、魚にならなくちゃ。
十二人の子供たちが声をそろえてつぶやいた
――ありがとう、お兄さん。
再び声を合わせて祈る人に告げると
彼等は家を出て
川の中に飛びこんだ
祈る人は
ふたつの老いと若さが逆転したままの遺骸を
呆然と見下ろしていた
子供たちは軽々とやり遂げたというのに
無残にも横たわる
失敗者の成れの果て
あの子供たちのように泳ごう
泳いで川原まで戻ろう
祈る人は決心し
島を後にして川に入った その時
雨が降り出した
やがて天は激
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