カゲロウ(百蟲譜6)/佐々宝砂
 
近くの小学校から
家路のメロディーがかすかにきこえる。
むくどりが騒ぎながら巣に帰る。
そろそろ帰ろうと思って土手に登る。

いつも歩く河原の
何度も踏みしめた砂地。
そこに蟻地獄がいるのを
今日はじめて知った。

綺麗なすり鉢状になっている
図鑑の挿画のような穴は稀で
たいていは歪んだり
崩れたりしていて

ここにもそこにも孤独な穴が
こんなにも群れていて。



(未完詩集『百蟲譜』より)
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