氷点/ミゼット
 
幸せになりたかったと彼女は言った

たった二十三歳で、早くも全てを諦めようとしている

お前よりも苦しい人がいる

お前の五体は丈夫だが、あの子をご覧と人が言う

彼女にその声は届かない


なりたかったと全てを過去形にして彼女は話す

たった二十三歳で、早くも全てを諦めようとしている

指の指す先に目を背け

彼女は内側に目を凝らす

ハロー、私の悲しみ

ハロー、私の恐れ

ハロー、ハロー、応答願います

ハロー、私の苦しみ

ハロー、私の怒り

ハロー、お元気ですか


痛みは私だけのものと彼女は言う

私のことを話して欲しいのにとも言っていた

違う人になろうとして、

たった二十三歳の女は、機械になる夢を思い出している
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