明るい壁/緑茶塵
 
雨の降らない大地に、草原の香りと夕方を司る離れた二つの太陽が昇る。
遠いかつての住民達が鳴らしていた最も古い太鼓のリズムと、白銀の剣を突きたてようとしたのは、やはり土で出来た古い家の壁を達塞がるよう広がっていたに他ならないのか。
狩りに出向く前に、私だけはその深い谷を覗き、流れに逆らうように泳ぐ谷に住む美しく強い獣はもういない事を知る。
左手に白銀をたて、右手には藍と獣の刺繍のある槍をたてる。
男性である半身は黒い古着を纏い、女性である半身は朱いシルクを纏う。
祖霊と悪霊とを引き連れ、獅子と強い牡鹿を引き連れ、私は深い森に行く。
ここで佇むのも座す事も止めた時、独りきりできっと深い険し
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