千の顔/なかがわひろか
 
同じ干支が二度繰り返され
私は何人の顔と
すれ違っただろう

美しい顔
怒った顔
そして何より
醜い顔に

話すことなく
息を交わすことなく
ただ
すれ違った顔たち

美しく
怒り
そして
醜い

千の顔

彼らは私を
見ただろうか
彼らは私の顔を
どう感じただろうか

目を閉じて
浮かんでくる顔など
露もない

ただただ
すれ違っただけの

千の顔

彼らは今も
何人の人と

話すことなく
息を交わすことなく

すれ違っているだろうか

(「千の顔」)

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