作品が人を傷つける/渦巻二三五
強く残っています。
私はあのとき初めて、作品が人を傷つけるとはどういうことかを知りました。
あの人はどうしてあの二首を並べたのだろう、と時折思い返すことがあります。
自分のこどもが成長した安堵と誇りと少しの寂しさとを詠み、それからふと目を移して木蓮の花を見たとき、木蓮の白に無垢を感じ、子育てをしてきた自分の乳房との違いを思ったのかもしれません。
最近になってそう思い至りました。
そうであるならば、この二首が並べられたことも作者の内の無意識の必然であるでしょう。
これは私の勝手な解釈ですけれど、そのように思い至ったことで、なんとなく、こだわりから抜けて少し気持ちが軽くなったような気がしました。
そうしてやっと、私はこの二首の歌を今まで憎んでいたのだということに気がつきました。
二〇〇三年二月五日
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