私に名前を授けてください/クローバー
と丸まっていたかったと、どこか、遠くを見ていました。
冷たい、と、口に出してわざわざ言うほど、感情屋でもありませんでした。
靴と車輪は、ゴム時代、工場では、隣の席の気になる奴で
シャープペンの貸し借りなどをしたり、冗談を言ったりした仲でした。
枝を持ってみる雨が、親指と人差し指をつけたとき
いっそう激しくなりました。
鬱蒼と枝が風に鳴り
足元は、あいかわらず、ぐしょぐしょいってそれでも
桜は、どこか遠くを見たままでした。
車輪は、靴に、気づきもしません。靴も車輪を気にしません。
ぐちゃぐちゃいって、踏みつけられて進んでいきました。
桜は、葉っぱよりも、花が咲き、雨です。
今のゴムたちは、なんなんだろうと、首をかしげながら
それぞれの速さで、忘れたことを思い出さないように進んでいました。
しかし、本当は名前なんて無かったから、忘れてなんかいなかったのです。
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