聖夜/彰
開けた扉から洩れた
明るい光と暖かな風
重なり合う笑い声に縋ろうと
手を伸ばしてはみたけれど
扉は再び閉ざされた
戻らなくてはならない
約束の時間だ
あてがわれた場所は
ここではないのだから
こすり合わせた手に
吹きかける息は白く
裸足で踏み付ける雪に
小さな足跡を残す
ただ
その足取りは正確で
揺るぎなく思えたから
何度振り返っても
叶わない望みはあるものだと
理不尽さを噛み締めては
いくつも いくつも
飲み込んできたのかと
手をとって
抱きしめてくれる人が
いないと嘆くよりも
生きるための狡猾さを
選び取ったことに
見守ることしか
できなくて
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