トナカイの夢/砂木
サンタになる
と 義父が言ったのは 六十歳になったあたり
子供の頃からの夢だと言い
衣装をそろえ 駄菓子を買い込み
白い布など用意したので
義母は 義父用に衣装をつめたり
白い袋にしたり お菓子を小分けにしたり
部落の中は歩いていけるけど
隣りの部落までは 車じゃないと無理だと言うから
私が トナカイに なるしかなかった
かぶりものは いらないらしいし
会社から帰って 半身半疑のまま家に入ると
赤い衣装 帽子ひげ 白い袋 鈴を持って
サンタがいた
メリークリスマス!
条件反射で 叫んでしまって
眼の前にしたら 世間体が吹っ飛んだ
私は 私は
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