夕日の丘の一日/夕凪ここあ
 

その前に
いつも眠ってしまうけれど

町外れの
夕日の丘には誰も来ない
ここまで来るのに
日が暮れてしまうし
来たところで
なんにもないから
なんて
みんなは言うけれど
おんなのこは
学校が終わると
駆け足で
狭い町並みを抜けて
まっすぐ夕日の丘へ
お菓子の家みたいな家から
晩ご飯の
あったかい匂いがする
後ろにはおっきな夕日
ただいま、の声

夕日の丘の
小さな家で
お母さんとお父さんと
それからおんなのこがひとり
一日の他愛もない話をする
夜には
空いっぱいに
星が瞬く
けれど
小さな家の小さな天窓には
100と1も入るか
わからない
それでもこんなに綺麗なのは
きっと
夕日の丘が
町でいちばん
空に近いから

なんてことを考えながら
おんなのこが
とっくに眠ってしまった隣に
横になるお母さんとお父さん
小さな家だから
みんなで丸くなって
幸せを抱きながら
眠りにつく

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