吊り革/緑茶塵
 
第二次世界大戦の帰り
コーヒーのお代わりと、兄によく似た笑顔に何故か敗北を予感した

銃剣によく似た冷たいものが
心臓の半分弱を撫でている

その日はいつものようにマーメイドによって、パンを買う

むかしむかしコンクリートの塀は、今よりずっと高かった
有刺鉄線も金網も効果が無かった

幌のある後輪の方が大きい車に乗って、それらを眺める
しかも一方通行だ

朝日よりも夕日に希望を託してしまうのは
気弱な自分のせいに違いない

彼女は文学賞や建売住宅の情報誌を見ている

この道はアスファルトで、街路樹の紅葉はそれなりに美しいと思う

大して時間が変わらないという事に、私は腹を立てている
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