吊り革/緑茶塵
第二次世界大戦の帰り
コーヒーのお代わりと、兄によく似た笑顔に何故か敗北を予感した
銃剣によく似た冷たいものが
心臓の半分弱を撫でている
その日はいつものようにマーメイドによって、パンを買う
むかしむかしコンクリートの塀は、今よりずっと高かった
有刺鉄線も金網も効果が無かった
幌のある後輪の方が大きい車に乗って、それらを眺める
しかも一方通行だ
朝日よりも夕日に希望を託してしまうのは
気弱な自分のせいに違いない
彼女は文学賞や建売住宅の情報誌を見ている
この道はアスファルトで、街路樹の紅葉はそれなりに美しいと思う
大して時間が変わらないという事に、私は腹を立てている
戻る 編 削 Point(4)